第10章 I Feel for You(心中お察しします)

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 練り直し、リライトした企画書を製本ファイルで綴じ、封筒に入れ、宛名シールを貼る。郵便局へ持っていくため、愛用のTAKEO KIKUCHIのナイロンブリーフに詰める。普段、オンラインでコンサルティングを担当している企業にも、ついで(・・・)にあいさつをしてこようと思っている。なんなら宣伝がてら、今後の事業展開を話してみてもいいだろう、あくまでさり気なくだが。 「アクティブだねぇ。誰かが言ってたが、デキる人間ってぇのは才能とか運とかよりまず、パワフルによく動くそうだ。疲れを知らない。おまえがその口(・・・)だったとは意外だな」 「あ? 何で!?」  ほぼ主夫化している柊一が用意してくれた朝ごはん――昨日の残りの明太ポテサラとチーズのホットサンド、コーヒーと皮ごと厚めの輪切りにしたキウィフルーツ――皮ごと食べた方が栄養価が高いらしい――をかっこむ。  最初は正直面倒だったのだが、柊一が自分の健康を気にかけ、作ってくれているという事実が、何ものにも代え難い幸福を秋にもたらしてくれた。 『こんな現実、一年前は想像もできなかったな……』  助手席にナイロンブリーフを置き、エンジンをかける。車は中古で買ったマツダのアクセラスポーツ。イキっていたCEO時代はポルシェ911の新車を乗り回していた。現在でも、安価な中古モデルでさえ1,200万以上する。フェラーリじゃないところが堅実だったと自分では思っている。  車もそうだが、スーツや時計など身につけていたものは、会社を失った際すべて処分した。残っていた借金の返済にあてるためではあったが、目にするのが辛かったというのも理由として大きかったかもしれない。  あの最悪な事態からいろいろあって、自分はいま、人生で最高の時期を迎えつつある。
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