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「究極的に、愛に勝るものはないのよ」
「うむ、言葉にするのと安易だが、つまりそういうことだな」
「げっ!!!」
反射的に後ろを振り返りたくなる衝動をなんとかなだめ抑え、ミラー越しに後部座席を確認する秋。
「いつからそこにいやがる💢」
「けれども愛は盲目でもあるのよね。周囲に気が回らなくなったり」
「うるせぇよ💢 質問に答えろ! てか、てめぇら! ここしばらく姿くらまして、どこで何やってやがったんだ?」
後部座席にその身を任せ、ちょっといいこと言ってみましたがどうですか的空気をかもす堕天使たちに、いつもと変わらない調子で噛み付く秋。
「答える義務はないわね」
「右に同じ」
予想外の冷ややかな反応に、今度こそ首を半振りする秋。
「ちょっ、前見て、前! 幸せの絶頂で昇天してしまう展開もそりゃあるけど、私たちまで巻き添えにしないでくれる?」
「あとで主にもちゃんと話す。いまはとりあえず運転に集中」
真っ当な主張がよけいに腹立たしい。苛立ちながらも、しかし従わざるを得ない秋だった。
「開業準備、いい感じで進んでいるわね」
「…………………………」
自分でも奇妙だったが、楓のこの表面的な台詞に、何やら胸騒ぎを感じるのだった。
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