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「お、久しぶりぢゃね? あん時以来? 元気だった? おまえらって本当、仲良いよなぁ」
躊躇なく堕天使どもを受け入れ、その関係性に大いなる誤解をしているっぽい柊一に、はげしく違和を感じる秋。
『あの時以来って、いつだよいったい……』
「主夫がだいぶ板についているようだけど、起業準備には関わらないつもりなの?」
「いや? そういうわけじゃないけど、こいつがワタワタ動いているうちは、まだ俺の出番じゃない気がしてさ」
「まぁ、そうかもね」
「うむ」
自分と堕天使どもの関係性と、柊一と彼らの関係性には、明らかに何か――異なるものがある、そう感じた秋は、そこに一抹の寂しさを覚えた。堕天使どもに対してなのか、柊一に対してなのかははっきりしないが、疎外感を感じたのだ、共通の知り合いが、自分の知らないところで、自分の知らない情報を共有していることに。
自身の狭量っぷりに辟易してしまうが、知りたい欲求には抗えない。
「あの時って?」
夕飯は急遽手巻き寿司パーティに変更になり、具材の準備に余念ない柊一が生返事を返してくる。
「あー…………言ってなかったっけ? 会ったんだよ、アイツと――柿崎眞名音? 呼び出されてさ。何かいろいろ言ってたけど、その後、生演奏タイムで(堕天使どもと)一緒になってな……」
初耳だ。というか秋自身、眞名音の演奏はまだ聴いたことがない。ますます孤独感が募る。
「人間性はともかく、すばらしい演奏だったわね?」
「あぁ」
「うむ」
何を隠そう、柿崎眞名音はアメリカの名門音楽大学を首席卒業していた。
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