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このところ秋はひとりでお風呂に入るようになっていた。
といってももちろん、母親の目がちゃんと届くように、脱衣所やお風呂場のドアは閉めきらずに置くとか、母親が脱衣所や洗面台を掃除しているときに、会話しながら入るようにしているのだが。
髪も身体も洗い終わって母チェックが済むと、湯船に浸かって数を数える。長く浸かっているのは大の苦手だ。
お湯に浸かっているときふと脳裡に浮かんでくるのは友里絵ではなく、兄の眞名音のなにか企んでいそうな顔だ。
きれいな顔をしているのに、何かひらめいたときにスッと細められるあの瞳は、ものすごく酷薄に見える。しかしそれが、秋を惹きつけるのだ。
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