2.ケツ毛のアン

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 転んだのはぼくの勝手だし、そもそもあんな道ばたでしゃがみこんでいたら誰に蹴られても文句は言えない。躓いたアンが転ばなくてよかったくらいだ。それに服も大して汚れていないから、怒られるほどのことじゃない。けど、アンの声が嬉しそうだったので、ぼくは口を挟まないことにした。  アンはとっても『浪費家』だ。浪費家っていうのはつまり、稼ぐそばからためらいなくじゃんじゃんお金を使う人のことらしい。ぼくはアンが同じ服を二度着ているのを見たことがないし、宝石やバッグも会うたびに違うのを持っている。本当は男の人だけど、すごく背が高いモデルの女の人に見えるアンは、あちこちのパブやクラブで引っ張りだこらしい。だからお金に困っていないのだそうだ。それにパパと違って借金まみれの変な男に引っかかったりもしない。『パトロン』という恋人みたいな、そうじゃないみたいな、複数の男の人と付き合っていた。その人たちが出資してくれるのだという。ぼくにはよくわからないけれど、要するにお小遣いをくれる人が何人も居るってこと。     
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