2.ケツ毛のアン

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「ねぇ、アン。ぼく、着替えより手袋かマフラーが欲しいな。上着を店に忘れちゃったんだもの」  アンがぼくの手を引いて店内を物色し始めたので、開いているほうの手で手近な商品に触れてみたりしながらぼくは言ってみる。  思うんだけど、ここは子供服の店じゃない。だって、スパンコールのたくさん付いたとても裾の長いワンピースだとか、体重をかけたら折れそうに細いヒールの靴が並んでいる。多分、ショーに出る女の人や、パーティにお呼ばれする人なんかが買い物する店だ。どれも値札は見当たらないけれど、店員の佇まいで高級なブティックらしいとわかる。見回す店内は壁一面鏡張りで、品物の置かれた棚がガラス製だったり、島になった売り場の台に金色の縁取りがあったり、何を照らしているのかよくわからない照明が数えきれない数輝いて、品のいい管弦楽のBGMがゆったりと流れていた。とてもぼくのような子供が出入りする類の店じゃない。子供服の取り扱いは一切なさそうだ。     
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