1.パパとぼく

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 ぼくの座っているのは、店の前に二段だけある小さい階段で、お尻が冷えてジンジン痛い。けどそれも我慢することにした。パパの喧嘩はいつものことで、ぼくが止めてもどうせ止まらないし、邪険にされるだけだ。それだけならまだいいけれど、とばっちりを受けて怪我をするはめになる。そうするとパパは後でとても申し訳なさそうにするから、ぼくはなるべく遠くでおとなしくしているのがいい。別にパパが悪いのではないのだし。悪いのはパパの『男を見る目』ってだけ。  パパは男の人が好きな男の人だ。  だからパパの恋人は毎回、男の人で、年齢は若かったりずっと年上だったり色々だけど、どっちにしろロクな相手じゃない。ぼくにだってわかるんだから、相当だ。酒乱だったり、薬漬けだったり、とにかくだいたい暴力的で情緒不安定。たまにマトモそうに見えても、実はとんでもないギャンブル好きで莫大な借金を抱えていて、金目当てに言い寄ってきただけの相手だったりする。  パパは結構お金持ちだ。ショーパブの『経営者』というものらしい。経営者っていうのはつまり、その店の持ち主で、働かなくても売り上げをせしめられる立場だって聞いた。  ぼくが今、表に座っているこっちの店は趣味でやっているそうだ。カウンター席だけの小さなバーで、店ではパパはマスターではなくて、ママと呼ばれている。オカマバーというやつらしい。決まった従業員はいなくて、普段はパパがひとりでお酒を出しながらお客の話し相手をする。時々、お小遣いが欲しいパパの知り合いが、臨時雇いのヘルプに加わる。     
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