2.ケツ毛のアン

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 パパのショーパブに行くのもいいし、時々ヘルプに来る知り合いの居る店に顔を出すのもいい。どっちもまだ営業時間じゃないけれど、ぼくは取り立てて騒がしくするほうではないし、イスを借りて勝手にホットミルクをご馳走になるくらいは大目に見てもらえる。それか、ゲームセンターやボウリング場に行くのも手だ。お小遣いはあまり持っていないけど、入るだけならタダだから、片隅にお邪魔して遊んでいる人たちを眺めて過ごすことができる。或いはカジノやダンスホールに行くという方法もある。本当は、未成年者は立ち入り禁止の場所だけど、顔見知りが居るので暖を取るくらいは許してもらえた。  適当に気が向いたところに寄ろうと決めて、ぼくはひとり歩き出した。  基本的に、この町の道路はどこも狭い。一番大きな目抜き通りも、自動車は入ってはいけないことになっている。タイヤに踏まれたり排気ガスに暖められることのない雪が、薄っすらと地面に降り積もってきつつあった。  明日になったら一面真っ白だったらいいなと思う。そしたら、パパと一緒に窓から町を眺めて、それから二人で雪遊びをしたい。雪化粧された町の風景は、きっとパパの気持ちもまっさらにしてくれる。でないとパパは落ち込んで、たくさんお酒を飲まなくちゃならない。恋人と喧嘩したあとはいつもそう。元々バーでお客と一緒になってお酒を飲むのに、お客が居なくなってからもずっとずっと飲み続けるから、パパは酷く酔ってしまう。酔いつぶれてカウンターで寝てしまうこともしばしばで、風邪をひいたら可哀そうだ。     
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