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俗にウナギの寝床などと呼ばれる構えの店の奥には、細い廊下と坪庭があり、それを更に進むと薄暗く急な造りの階段が待ち受ける。
ギシリギシリと板の軋みのうるさいその梯子段を上がると、今度は来た道を折り返す向きに二階の廊下が続いていた。
左右の襖のいくつかの前に、手漉き和紙の張られた置き灯篭が、ぼうっと明かりを揺らめかせている。客待ちの合図である。
これこそが『梅に鶯』の本業であった。
一言で言えば陰間茶屋である。
寺川町の西の先には芝居町があり、一昔前は若衆歌舞伎や野郎歌舞伎の芸人が、修行と称して茶屋で男色を売り物にしたのだ。
かつての茶屋町には十軒を超える陰間茶屋が競い立っていたそうであるが、その名残も今では『梅に鶯』のみとなった。
吉原遊郭ではあるまいに、昨今では人身売買も厳しく諫められるから、売りをしているのは進んで小遣い稼ぎに来る少々見目のいい若造である。
素人陰間を使って金子を巻き上げる店主も店主だが、手っ取り早く金になるからと容易く同性相手に股を開く若造も若造であり、今も昔も色を極めんとするなら女色男色両色食らってこそという認識は男どもの間に蔓延っているもので、高い金子を払って訪れる客は客で少なくない。
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