二幕の十・絡むいと

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「わかるかい。ちっとばかしいつもより熱いだろ。どうしてだと思う?」 「あの男に()たれたせいですか」 分かり切ったことを敢えて言わせて、玉露は紅を引いた唇を笑ませる。 緩々と瞼を閉ざし、頬ずりするように占部の手の平に押し付けた。 占部は固唾を呑んでその様を眺めている。 閉ざした時と同様に、玉露はゆるりと瞼を上げると、睫毛の奥から流し目をした。 「こっちはなんだかわかるかい。どこぞで噂を聞きつけた小娘だか女狐だかが、あんたの名を騙って文を寄越したんだよ。開けた途端にこの(ざま)さ。指が切れて血が滴った。もうとっくに止まってるけどね。可哀想だろう?」 左の手は占部の手の甲に添えたまま、玉露はもう一方の手を彼の目の前に翳して指先を見せる。 サックリと切れた跡が細い一直線になって赤く刻まれていた。 占部の眉間にシワが寄る。 彼が口を開きかかるより先、玉露が言葉を続けた。 「けどね、可哀想なのはあんたの方さ。陰間なんぞに入れあげちまって、どこの誰ともわからない相手にまで知れ渡ってる。大事な跡取り息子なんだろ、こんな醜聞で回っちまって、旦那は平気なのかい」 「それについては、あなたが気を回すようなことではない」 「だろうね」
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