梅に鴬、室に笑う

二幕の十・絡むいと

そこで玉露はククと肩を揺らすと、不意に笑みを引っ込めた。

「だったらあたしの事情も旦那が首を突っ込む問題じゃないね。わかるだろ。
　あんたみたいな青二才に面倒見てもらう程、あたしは安かないんだよ」

冷然とした目つきと声で、玉露は見下すように占部へ告げた。
占部はハッと息を呑む。
直後に、玉露の真っ赤な唇がキュウっと口角高い傲岸な笑みを刻んだ。
流し目に挑発的な光が宿る。

「それでね、旦那、あたしが本気で嘆いているように見えるかい。だったら同情してくれてもいいんだよ」

占部の双眸が瞠目へと徐々に形を変える。
自身の本当の誤りを悟った瞬間だった。

「惚れ直したかい？」

つん、と尖った顎を上向けて、玉露が分かり切った口ぶりで問う。
占部はもはや声もなく、ただ内側を突き上げる情動に従った。