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「あなた、そのうち心中でも持ち掛けるんじゃないでしょうね。幾らなんでも許しませんよ。尤も、彼が応じるとも思えませんが」
反り返った喉首で尖った骨が上下に動く。
筋肉の付き方がまるで違うから、太さもまったく違うのに、
その長さといい、皮膚の薄さといい、無意識のうちに目が釘付けられる微かに脈打つ生々しさといい、今にも内側から肉を突き破り、血飛沫を散らしながら喉仏が飛び出して来そうな危うさといい、
やはりどこか共通するものをトキワはそこに見出した。
師弟とは、それ程までに似通るものか。
彼らは躾や仕込みと称して、いったい何を通わせ合って来たのだろう。
そんなことを彼は思う。
まるで絡み合う蛇のごとく、その隙に入れる者など居ない。
居たとしても、縊り殺されてしまう。
あり得ない妄想に、トキワは密かに歯噛みした。
してやられたと感じた春の宵を思い出す。
直前に受けた衝撃もまた思い出され、シクシクと胸が痛んだ。
少年の責める声が耳の内側に蘇る。
追い打ちを掛けるように、鳳ノ介はこんなことを言ってのけた。
「あれは案外、脆いからねえ。この俺の誘いとあっちゃあ、断り切れずに易々と命を散らすかもしれねぇよ」
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