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再び引き留められる格好となり、驚いた玉露が肩越しに振り向く。
不意を突かれた彼は、気安く肌に触れられたことに腹を立てるのも忘れて、
なんとはなしに手から腕、腕から肩、肩から首、首から顔と、相手の躰の上を目線で辿る。
殊の外、真剣な表情と出会って目を瞬かせた。
「ですが絶対あり得ないとは言えないでしょう。もし仮に、万が一にも彼が人浚いに遭ったらどうなさるんです?」
「どうって……」
珍しく玉露は口ごもる。
つまらない冗談だと切り捨てるには、予想外の雰囲気に呑まれていた。
「別にどうも……」
「どうともないと? あの子が急に居なくなっても貴方は平気なんですか?」
「それは……」
「現に彼が連れとはぐれても、お気になさらなかったようですしね」
やけに詰問口調で、しかし淡々と畳みかけてくる相手に気圧されて、
らしくもなく気弱な態度になりつつあった玉露は、そこでキュッと眉間を強くした。
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