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「あんた、この間の祭りン時のこと言ってんのかい?」
思い当たる節はそれしかない。
しかし玉露にしてみれば今更な話題である。
そもそも勝手に紅花を連れて行ったのは当のトキワだ。
責められた義理ではない。
無論、あの状況下でトキワが紅花に接触していたことなど当時の玉露に知りようはずはなかったが、
生真面目だけが売りのような占部が素性の知れない輩に少年を掻っ攫われて放置したとは思えない。
となれば、顔見知りと出会って双方同意のうえで預けたと考えるべきだ。
元来いい加減な玉露はそこのところ、後になって事実確認するなどという面倒はすっかり省いてしまったものの、
実際、紅花はピンピンとして帰ってきたのだから何も問題ないのである。
「大体、あんなガキに誰が手ぇ出すって――」
「貴方はもう客を取っていた歳でしょう」
適当に話題を流そうとする言葉を途中で遮られ、玉露はムッと唇を歪める。
「欲しがる手合いも居るはずです。それともまだ艶が備わっていなければ平気だと? 使い走りをさせるために、未だ仕込みをなさらないので?」
「あんた――」
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