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あんたに口出しされる筋合いはない。
そう言いかけた玉露は、しかし途中で言葉を替える。
「哥さんに何か吹き込まれたのかい」
僅かに、玉露の手首を握るトキワの手が痙攣した。
「さっさと水下げしちまうよう尻叩いてこいとでも言われたかい。探偵ってなぁそんな依頼まで請け負うとはね。ご苦労様なこった」
馬鹿馬鹿しい。と玉露は首を左右する。
やけに真面目な雰囲気を出すものだから吊られて緊張して損したとばかりに、凝った肩をほぐす仕草をした。
トキワの手からも力が抜け、するりと玉露の手首から離れる。
「まあ、そんなところです。いい加減に痺れを切らしてらっしゃいましたよ」
トキワはさもありなんと肩をすくめて見せた。
確かに、紅花は陰間として売り出すにはいい年頃である。
仕込みもまだでは少々遅過ぎる。
かつて玉露を育てた鳳ノ介が兄貴分として、煮え切らない玉露の態度に業を煮やすのも致し方ない。
「まったく、面倒見がいいと言うか、いつまでも親心が抜けないと言うか。あたしの好きにさせてくれりゃ良いのにさ」
拗ねた口ぶりになる彼に、トキワはなんとも言えない微苦笑を浮かべた。
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