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「天満堂さんの」
天満堂とは、かつて玉露が鳳ノ介に届ける花籠を頼んだ花屋の屋号である。
紅花はその使いをした。
元々それは紅花の犯した失態の詫び入れの意味だったのである。
さらにその失態の元凶となったのは篠山であった。
正確には席を設けた猪田の気の利かなさと、
鳳ノ介の気遣いと紅花の気配りが互いに裏目に出た不運による失態であった。
がしかし、それもこれも際立つところのない篠山を主役に据えて尤もらしく見せようとした為であって、
篠山にせめて人並みの生彩があれば事もなく済んだわけだから、
紅花の印象としては自身のうかつさを差し引けばやはり篠山が元凶なのである。
よって、迷子を案内してやろうという善意はともかく、実質役立っていない篠山と、それを断り切れない自身の優柔さも拙いとはいえ不本意ながら同道している状況に於いて、
彼女と出会ったことは何やら因縁めいたものを感じる状況であった。
と、言うと少々大袈裟だが、思い返せば紅花が天満堂を初めて訪れた折にも雨が降っていた。
あの時の雨は梅雨時のそれと違ってこうも鬱屈した種類のものではなかったが、
ともあれ色々と符合するように捉えられなくもない。
なんにせよ、渡りに舟ならぬ、迷子に花屋の助っ人登場であった。
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