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猫がネズミをいたぶる如く、蛇が獲物を締め上げる如く、
ゆぅらと揺れる長い尾やとぐろを巻く滑らかな鱗が目に映る。
そんな気がする言い草であった。
紅花はまるで金縛りにでもあったように身じろぎひとつできずに居る。
息苦しさを覚えた。
今しも鳳ノ介が牙を剥き、自身を呑み込んでしまうのではないかという錯覚にすら囚われる。
組み伏されている事実より、その妖気じみた鳳ノ介の纏う空気そのものが恐ろしかった。
意図せず紅花の四肢が戦慄く。
鳳ノ介が半身を傾け、互いの顔が近づいた。
紅花の頬の辺りに息がかかる。
指の長い、端整な形をした手が裾をたくし上げるよう、紅花の足首へと伸ばされる。
それを――
「そりゃさすがに度が過ぎるってもんじゃないかい」
別な手が押し留めた。
予期せぬ声にパッと紅花は顔を横向ける。
割り込んだのは言うまでもなく、玉露であった。
眠っていたはずの、である。
紅花のこれ以上なく大きく見開かれた瞳の前で、玉露は鳳ノ介の片腕を掴んだまま、「よっこいせ」と布団に起き上がった。
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