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胸からみぞおち、みぞおちから腰、腰から脚の付け根へと、顔を寄せる位置を変えながら猪田は徐々にずり下がってゆく。
男の吸い付き、或いは噛みついた跡が、白い肌に点々と、足跡の如く残されていった。
とうとう膝小僧にまでむしゃぶりつくと、猪田は片腕でもう一方の玉露の膝を割り開く。
あられもなく晒された箇所を無遠慮にまさぐり、指先を一気に沈めた。
「あぐぅ……ッ」
愛撫も前戯もあったものではない手荒さに、玉露が息を詰まらせる。
のけ反った首に汗が滲み、テラテラと淫猥に灯を撥ねているのが紅花の目にも映った。
苦し気に寄せられた柳眉の間に、細くシワが刻まれている。
それを見下ろすようにして、猪田は片手を奥に忍ばせたまま、膝立ちになってズボンの前を寛げた。
張りつめた物の容に、紅花は知らず息を呑む。
陰間修行に身を置く少年のこと、男の物を目にするのはこれが初めてというわけではない。
むしろ玉露のものと言わず、客のものと言わず、幾度も目にしている。
けれどもこの時ほど、それを狂暴と感じたことはなかった。
怒張、という表現がいかに的確であるかを知る。
それはまさに、怒り、張りつめていた。
猛り狂い、煮え滾っている。
即ちそれは猪田の心情そのものなのであろう。
そう思わせる狂暴な光が、再び男の目に燃えていることに紅花は気づいた。
三文芝居。お遊戯会。
騙し騙され、翻弄し合う二人を演じて興じている。
そんなふりをして、心底では、本当に猪田は嫉妬の炎を煽り立てられていたのだ。
まんまと玉露の策に嵌ったのである。
だが、玉露とてこの男にこれほどの情念があろうとは考えていなかったのかもしれない。
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