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半ば木偶人形の徒党と化した男どもは、
互いに目配せし合って顔色を窺い合った。
素人目にも高価な品であることは一目でわかっているだろう。
けれども、それがどれほどのものなのか、この男らにはわからないのだ。
その程度の品位しか備えていないのである。
玉露の言うことを真に受けていいのかどうか、顔を見合わせて互いに探り合っている。
酷く腹が立った。
紅花の腸が、今しも煮えくり返って悪し様な言葉として口から溢れ返りそうである。
それをかろうじて押し留めているのは、ここで余計なことを言っては、玉露の顔に泥を塗るとの思いからであった。
悔しくて涙が滲む。
それを知ってか知らずか、否、知ってのことだろう、
カタカタと震えるほどに拳を固め、唇を噛む少年の肩を、
玉露はそっとひと撫でした。
特別な言葉がかけられたわけではない。
それでも、諫めと慰めとを両方込めて触れられたことが、紅花には感じられた。
だから少しだけ、憤りの虫が収まった。
そのぶん、酷く悲しい気持ちが増したけれど。
「愚図愚図してんならこの話はなかったことにするよ。八つ裂きでもナマスでも好きにすりゃあいいさ。あんまり部屋汚して欲しかないけどね。まあでもできれば、『千切り』はお断りしとくよ」
ククっと、この期に及んで玉露は笑いをもらす。
紅花も、つられて頼りなく笑みを浮かべた。
もう笑うしかないではないか。
それを玉露の半月になった双眸が優しく見る。
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