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上手く飾られているか感想を訊こう、などと思ったわけでは無論ない。
扇について、老翁に話を聞くつもりであった。
玉露の許可はとうに得ている。
と言うより、彼がそうしろと言ったのだ。
扇を見つけた折、
これは自身の手に因るものと、思いもかけないことを言った玉露に驚き、
紅花が仔細を尋ねようとしたところ、
「爺っ様に訊いてみな」と、彼はそう返事を寄越したのである。
そう言うからは何かしら八木三郎と関連のある品なのだろう。
でなくばあえて今夜、床の間の飾りを取り替える必然もあるまい。
紅花が手柄と褒められたのも、同じ理由だ。
「おやおや、可愛いお子がやって来たね」
玉露の隣にちょんと座った紅花を見て、老翁はにっこりした。
上客であるから度々顔は見知っているはずだが、改めて向き合うのは初めてである。
「紅花でございます」
「佳い名だね。
染めて美し、食して善し、よく人の役に立つ。眩い陽の色に咲いたのち、日に日に色を深めて目を楽しませ、ただ愛でる者をも飽きさせない。ベニバナとは実にいじらしく可憐な花よ」
心の籠った声を掛けられ、紅花の頬がぽっと赤らむ。
ぱちぱちと忙しなく瞬きしながら、ちょっと俯き加減になった。
その初々しさに老翁の相好が一層崩れる。
こんな時、常の玉露なら妬いたふうをしていじけて見せるか、
「出来が悪くて困っちまうよ」などと一蹴して客の気を紅花から自身へと引き戻すのであるが、
今夜に限ってそうはせず、老翁共々紅花に目線を注いでいる。
まるで二親に成長の度合いを測られてでもいるかのようで、
紅花はもぞもぞと尻の据わりが悪くなる。
毎日一生懸命務めているのだから成果は上々、恥じるとこなど一つもない、などと、慢心する気質にないから尚のことである。
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