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いささか守銭奴のきらいのある親父であるが、
手前の焼いたスルメを大事大事に囲い込むほどケチではない。
女衒だか人買いだかから年端のゆかぬ子供を買い取り、
色売りに育てて荒稼ぎするのも、
先から陰間茶屋を営む家に生まれ育って跡を継いだからであって、
根っから阿漕な人間性というのでもない。
紅花を可愛いと思う心がないではないのだ。
まだ赤ん坊なのを引き受けて手塩にかけて育てたわけじゃなし、
日頃の躾なんてものは玉露に任せっきりで、
食う物、着る物、寝場所は与えても寝食を共にはしていないのだから、
親心なんて大それた代物は抱いちゃいないが、
それでもまあ、毎日顔を合わせて長く過ごせばそれなりの情はわく。
紅花は素直で気立てのよい子である。
こんな境遇であっても暗いところやしみったれたところ、
腐ったところがなく、
たまにトンチンカンなことをやらかすこともあるが、
働き者で見目も良い。
愛しくはなくとも憎からずだ。
まして、自身の実の倅がどうしようもないクズと来ては猶のこと。
息子のろくでなしは重々承知していたが、
よもや手前の尻を手前で拭えぬ体たらくとは思わなんだ。
しばらく前の出来事を思い出すと、親父の胸に暗雲が立ち込める。
あんな騒動を店に持ち込むとは、我が子ながら情けない。
腹立ちまぎれに女房を罵ってみたところで、子育ては二親の責任であろう。
しかも、その子の負うた借財を肩代わりしたのは、二親どちらでもない。
真っ赤な他人の玉露である。
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