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「これは海藤部長からお預かりした所沢の開発の進行状況の報告書です」
「ありがとう」
報告書を渡す際に、指先が専務の手に触れてしまった。
今までにも何度かこんなコトはあったが、昨日の一夜で、私は専務を意識するようになった。
「鉄仮面」
専務は報告書を眺めながらポツリと言った。
私のあだ名だ。
秘書室で働いている秘書たちは皆、「近江不動産」の正社員。
専務秘書である私だけが派遣秘書だった。
派遣秘書の私に嫉妬して、影で『鉄仮面』と言う妙なあだ名をつけて、揶揄していた。
「専務も私のあだ名をご存知なんですね・・・」
「何で?「鉄仮面」か知ってる?」
「さぁ」
私は首を傾げた。
そもそも、そんなコトはどうでもいい。
私はこの会社で専務秘書としての仕事をこなしていればいいのだから。
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