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私はタブレットを覗きながら専務に本日のスケジュールを伝える。
「定例会議の後は、11時よりA社と千葉のB地区の宅建についての打ち合わせ。
終わり次第、B社に赴き、契約。
アフターは花菱銀行の阿川頭取と赤坂の『梁山閣』にて会食の予定ございます」
「そっか・・・成瀬さん、少し目が赤いようだけど・・・どうしたんだ?」
専務は私の変化に気づいた。
昨日、二年交際した男性に一方的に別れを告げられた。
会社の新入社員と結婚するらしい。
最近、つれないと思っていたけど、浮気されていたとは。
私は笑顔で別れを承諾した。でもそれは強がっていただけ。部屋に戻り、一人で泣いた。
「花粉症で目が充血しているだけです」
「花粉症?しかし、今は秋だぞ。季節外れだな・・・」
彼は『近江不動産』専務・佐野和希(サノカズキ)28歳。
セピアブラウンのヘアにスパイラルパーマをかけ、ツーブロックスタイルに仕上げた髪型、切れ長の黒水晶のキレイな瞳、整ったイケメン顔に肉厚のいい唇から繰り出される愛嬌のある笑みで女性を悩殺する。長身でフェミニスト。モテ要素が完璧の彼は女性社員たちには大人気だった。
私は派遣会社『グローバルサービス』から派遣され、秘書を務める成瀬一花(ナルセイチカ)26歳。
秘書の仕事の傍ら、専務の父親の佐野柾史(サノマサフミ)常務に頼まれ、彼の最良の花嫁選びを水面下で行っていた。
しかし、花嫁選びは難航していた・・・
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