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「常務、専務からです」
私は常務室を訊ね、専務から渡すようにと言われた書類を手渡した。
『近江不動産』は大手ゼネコン『近江建設』の系列会社。
都内でも有数のビルやマンションを所有し、ゴーストタウン化した街、シャッター通りになってしまった商店街などの再開発にも力を入れていた。
住民の高齢化で、死んでしまった街・多摩ニュータウンの団地をリノベーションし、街に再び息吹を注いだ大プロジェクトを成功させたのは最新の話。
常務が一代目で、専務が二代目になる。
「ありがとう。成瀬さん」
常務もまた…専務に似てイケオジ。
専務も常務のように歳を重ねていくのだろう。
「成瀬さん、和希の花嫁候補は見つかった?」
「いえ・・・」
「和希の相手する女性は財産と地位しか見ていない者ばかりか・・・」
「一層のコト、常務が選んだ女性とお見合いさせた方が結婚への近道になるかと思います」
「この俺が和希の相手を選ぶのか?」
常務は酷く驚き、顎に指で摘まみ、真剣に考え込んだ。
「そうだな・・・一人いい子だと思う女性は居る・・」
「そうですか…なら、その方と専務を・・・」
「君だ。成瀬さん・・・」
「私ですか??それは困ります・・・常務」
「君には交際している男性が居るのか?」
「いえ・・・昨日別れました・・・」
「なら、いいじゃないか・・・是非、ウチの和希と結婚して、孫を産んでくれ」
「それは・・・」
「それは冗談だ・・・」
私は胸を撫で下ろした。
「和希に少しでも気があるなら、真剣に考えてくれ。成瀬さん」
「常務・・・」
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