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「あ・・ああ」
ここは以前のような幻魔世界ではない。もはや、危険はまったくない。マ王が心を入れ替えて以来、この世界にいたおぞましい危険なマ族は姿を消していた。すべてがマ王が作ったかりそめの化け物たちであったのだ。むしろ、この宇宙の中で、今では”太陽の戦士たちにとっては一番安全な場所”になっていたのである。
「うむ、行ってみるか。といっても、どこかにそれがある当てでもあるのかい、ラチル」
「うんにゃ、ねえ。いいじゃない、時間が少々かかっても、それが冒険ってものだべ」
「まあ、そうだけど、なにの当ても無く歩き回るのも、なんだか剛腹だなあ」
「それより、ここ、寒いね」
「寒い?そうかなあ」
「なんだか、ずっとウサギ人間をやっていたからかもね。こう、普通の人間になると、寒い気が」
「そうかな。僕は、ずっと快適だけど。ここは、そういう世界なんだからね。心の持ちよう一つで、大きく変わる」
「うむ、でも、なんだかなあ」
「じゃあ、こうしようか」
「え」
「あぽーつ!」
ぱ・・
ドナーの手に、それが現れた。
「すごい」
毛皮のようなふわふわもふもふしたフードつきマントだ。
「そうかな。なんだか、あのソニーにやり方を聞いた。この程度のことは、この世界でなら、僕にも出来るようだ」
この少女、ラチル。なかなか年齢不詳なところがある。小学生の中学年くらいの感覚なのだが、どうみても、もっと年上じゃないと時間的には帳尻が合わない。毛皮フードに女の子のお子様向けに、うさぎのような耳がついていたのは、ご愛嬌というものだろう。
「ほう、案外、似合うじゃない」
「そうかなあ」
「赤頭巾ちゃん、というよりウサギ頭巾ちゃんというかんじかな」
「ま、ドナーがそういうなら、それでいいべ、じゃ、行こ」
「といってもなあ、どこにあるのやら」
「じゃあ、マ王さんに聞いた見たら、どうだべ?あの人なら、この世界のことはみいんなお見通しのはずだから」
「あ・・その手があったか」
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