もふもふのレイチェル

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<なんだ、レイチェル> 「マ王さん、あたしたち、DC-8のところに行きたいんだ。教えてほしいんだべ」  ここはアークの司令部とでもいうべき、神殿のど真ん中の広間だった。そのさらに真ん中の円形舞台のような台の上の玉座に、生まれ変わったマ王は白い浄衣をまとって鎮座している。 <うむ> 「あら、あなたたち、DC-8のところに行きたいの、レイチェル」 「ああ、そうなんだ、クロノスさん」そこにあらわれたギリシャ人の美少女に応える。  彼女は、まさにそのギリシャ古代の神話の人間なのだ。そんな時代の人間であるのに、彼女の順応度は群を抜くどころではなかった。”流れ”でムーの王女の鶴の一声で、このアークの総責任者になったとドナーは思っていたのだが・・正直、こんな権力闘争的な話にはまったく興味のないドナーだったので、まったく無視していたのだが・・この人選は、的を射ている以上のものだったというしかない。ちょっと見ない間に、彼女の柔軟な頭脳は、またたくまに全ての時代の情報を吸い込み、時系列を理解して見せた。今や、まだ若い彼女の頭の中に、人類1万年以上の歴史年表でも折りたたまれてでもいるかのようだ。それも、必死に勉強して、というのでもなく。  単に、その知識のほうが勝手に彼女の意識の中に沸いてくるという感覚なのかもしれない。このアークのどこかに、コンピュータでいうところの”超巨大外部記憶装置”があるのかもしれない。そして、彼女の意識はそれに自在にアクセスしているのだろう。その順応の妙味に、ドナーは舌を巻くしかない。  当然ながら、ソル王女は最初からクロノスのその能力を見破っていたのは間違いないから、さらに恐れ入ったということで。もはや、クロノスは短時日で押しも押されもせぬ、このアークの主になっていたのである。だからこそ、この美少女は、当然のようにDC-8のことを知っていたのだ。  まったく、彼女の出自を知らなければ、見過ごしてしまう事実かもしれないが、とにかく、ドナーは、その年下の少女を仰ぎ見るような気分なのである。 「だったら、彼女も同行してもらえないかしら」 「彼女・・?」 「新来の”太陽の戦士”なのだけど。ここにくるのは、初めてさんなの」クロノスは繰り返した。  彼女の歴史記憶能力は、驚天動地なのだが、それ以外は、まったく普通の女の子なのだ。
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