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「こちらへ、市枝さん」
「・・はい、クロノス」
まだアークの様子が良くわからず、おどおどしている様子が見て取れた。東洋人の長身の美しい女性だ。何の根拠も無く、日本刀が人間の女になったようなイメージを、ドナーは彼女に感じた。
東洋人の女性、若く見えるが、案外な年齢かもしれない。テレパシー能力を使えば、知れるかもしれないが、ドナーはしない。或る意味”宝の持ち腐れ”はドナーのためにある言葉かもしれない。
「彼らが、DC-8のところに行きたいそうよ。一緒にいったらいかが?」
「はあ」
「彼は、ジョージ・ドナー、そして彼女はレイチェル。こちらは、木村市枝、日本から来たそうよ。ちょうど、あなた方の時代の人なの」
「そうなんですか」
「市枝、ドナーはそのDC-8に乗っていたのよ」
「そうなんですか。じゃあ、先生は、丈先生のこと、ご存知なのではないですか、ドナー」
「丈先生?学校の?」
「いえ、学校の先生ではありません。東丈先生は、人類の偉大な導師になる人です」
「アズマ・ジョー・・あの魔人”るしふぇる”に合体した?」
「ご存知なのですか、ドナー」
「いえ、直には。あのDC-8に、彼が乗っていたというのは、後から知りましたが、だから、あの飛行機に乗っている間は、見かけているかもしれませんが、話をしたことはないんですよ。魔人”るしふぇる”は、確か、今は自分たちの来た世界に戻っているはず、そのことは?」
「市枝に話はしましたが、納得いかないようで」
「私は、どうしても東丈先生を、元の世界に取り戻すために、こうしてはるばるといろんな世界を旅をしてきたのです」市枝の切実感、必死さが、その言葉からドナーの胸に迫った来た。
それは、不意に失踪した最愛の恋人を探す女性のそれではないようだが、それ以上の”願い”のようなものであった。
「わかりました・・そのDC-8を見れば、少しは彼女の思いが収まるだろうということですね、クロノス」
「ええ、まあ、そんなところで、お願いね、ドナー」
「わかったべ、クロノス、じゃあ、行くべ、市枝」
そう応えて二人の手を引いたのはラチルだった。そのしぐさは、まさにあの、彼女がウサギ人間だったときと同じで、ドナーは、思わずどきっとしたのだった。
「行くって、どこに行くのか、わかっているの、ラチル」
「うん、マ王さに、聞いたべ」
「いつのまに・・」
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