もふもふのレイチェル

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「うむ・・」 「でも、気にするなって、大角先生が・・最悪で死んでも、魂は不滅で、またよみがえることが出来るんだからって」 「なんだか、それ、説得になっているのかないのか」 「何億年も続く幻魔大戦がそんな簡単に終わる分けないのだから、結局、どんな英雄でも、寿命尽きれば死ぬしかないんだからって」 「ううむ、それはそれで卓見かもしれないけど」 「だから、まず、魂の柔らかさをなくすなって。”柔よく剛を制す”って、よく言っていたわ」 「幻魔は、所詮は死霊の親玉だから・・最後はワンパターンの”力押し”しか出来なくなるっていうなあ」 「そうなのか?」 「ああ、技を創意工夫するのは、憑依した超能力者の意識がまだ作動している場合で・・憑依度合いが宿主の超能力者の意識を完全に飲み込んじゃうと、その意識は、膠着してしまうらしい。何も考えられなくなってしまうんだね。だから、力押しになる。まあ、それはそれで問題なのだけど。太陽の戦士側も力押しの実力勝負になれば、あとは消耗戦になってしまうわけで」 「もし、幻魔の力を跳ね返す万能の”鏡”みたいなものがあったら、どうなるんだろ?」 「もし、そんな便利なものがあったら、幻魔の呪いの思念は全部、本人に戻って・・自分が苦しむだけで終わってしまうだろうね」 「面白いわ。そんな都合のいいものが、この世界にあるとは思えないけど、それ、いいアイデアだと思うわ、ラチル、よく思いついたわね、すごいなあ」市枝は、思わずラチルにいった。 「そうかなあ、なんか、照れるべ」その様子は、まさにその年齢相応の少女のようであった。 「苦しかった」不意にラチルはいった。「苦しかったべ、ずっと。さたん様のためにがんばっているつもりだったけど、みんな回りは、味方といっても名ばかりの競争相手で、負ければ、そいつの奴隷になるのが当たり前で、いつも下の人間は、ちょっとでも上のやつを追い落とすことしか考えていなかったし、上は、少しでも自分に勝るやつがいたら、上に上がってこないように、早めにつぶしてしまおうと必死になって。心の休まるときがなかった、あたしは、そんな暮らしに本当に疲れはてててしまっていたんだべ」 「それは、大変だったわね」 「それじゃあ、心の休まるときがなかっただろうなあ。そんな世界が、理想郷だなんて、とても思えないが」
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