もふもふのレイチェル

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「でも、みんなさたん様に褒められることが、自分が生きている理由の全てだと信じて、それしか考えられなくなっていたんだべ、あたしもそうだった」 「それしか考えられなくなってしまう・・かあ。それは、いけないね。強烈なカリスマってのも、考えモノかもね」 「それって、あたしへの当てこすり、ドナー?」 「え・・」一瞬で、顔つきの変わった市枝に驚くドナーだった。 「あたしは、東丈先生を信じ、先生を私たちの世界に戻すことしか考えられないんだからね。それって、幻魔さたんの寵愛を求める、ラチルの教団の人間と一緒だってことでしょ。そうよ、そうです、そのためだったら、それを邪魔するやつがいたら、蹴散らして、世界の一つや二つ潰しても、あたしは平気なのだからね」 「そんな」 「だから、だから、あたしは、ここまでやってきたんだ。ここまでやってきたんだからね。CRAのほかの子達が動かなかったのに、わたしだけは、ここまで来たのよ。東丈先生を、取り戻すためにね。それが、ダメだっていうの、いいなさいよ、ドナー」 「それは・・」 「ダメだよ、市枝」 「ラチル!」  市枝は、その切れ長の目をその瞬間、しかし、かっと見開いた。 ぐ・・! 「市枝は、東丈と寝たかったのか」ラチルは、はっきりと言った。 「そ・・そんな」まだ、小学生の中学年にしか見えない少女に、それをずけりといわれて、市枝は、固まった。「東丈先生は、清浄な天使のようなお方よ。そ、そんな、下世話なことが・・まして、わたしみたいな元スケ番の穢れた女に」 「そんな男がいるものか。幻魔さたんも、幻魔るしふぇるも、繁殖魔人だった。リア王女って嫁さんがいても、教団の女と寝ては、尻を蹴飛ばされていたべ。あたしだって、大人になれば、そういうときが来ると、覚悟していたんだべ」 「・・・・」  そのあからさまなガールズ・トークにドナーは、身の置き場がなかった。女性同士の生々しい会話は、男同士のバカなエロ談義と違った、なんともいえぬ逃げ出したくなる衝動にかられるものだった。あるいは、男同士はバカ話と思っているが、このような衝動に駆られる女性も中に入るのかもしれないと、心のどこかで考えているドナーだった。  しかし、ドナーは踏みとどまった。万が一とはいえ、激昂した市枝がラチルに暴力を振るわないか、その危険を感じたからである。
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