0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ドナー、ジョージ・ドナーといいます。説明はしたいと思いますが、きっと理解できないと思います。とにかく、ここにいてもし方ありませんから、この機体を離れてください」
「しかし」
「ああ、皆さんが休める場所、きちんとありますから、それは安心してください」
「はあ」
「姫様、姫様、やあ、何が起こったのじゃ、機長、姫が、ルーナ姫が、どこにも居られんのじゃ」
いきなり客席からの扉を開けて、禿頭、白ひげのツルのような紳士が血相を変えて顔を出した。
「む・・・」
操縦席にいた、あきらかに民間人の三人組に、その老人は明らかに面食らって、言葉を切った。
ほんの数瞬前の大騒ぎが不思議なほど静まっていたからだ。その状況の変化に、あらためて、今頃になって気がついたのだ。
「もしかして、ルーナ王女のおつきの方ですか、ご老人」
「そうじゃ、レム侍従長である」頑固そうな老人が言った。
「とにかく、異常事態が起こりました、だから、落ち着いてください」
「これを落ち着いていられるか、お若いの」
「でも、落ち着いても、あわてても、こうなっては、おんなじだべ、おじいさん」
「いったい、何が起こったのじゃ」
「みんな、死んじゃったんだべ」
「え・・死んだ?」
「そうだべ、ここは、あの世なんだ」
「なんと、ここは、死後の世界だというのか、そういえば、静かじゃな。それに、そうそう、先ほど、姫様は、寝ぼけたのか、この飛行機が落ちると叫ばれて居ったが。それは、お得意の予言だったのかよ。しかし、そうなると、ここは、天国かいな、地獄かいな。とほほほほほ、わしらは死んでしまったのかいな」
「ラチル」
「でも、そういったほうが、普通の人にはわかりやすいべ」
「そうかもしれないけど」
「落ち着いてください。みなさんは、亡くなったわけではありませんが、しかし、トラブルによってここにたどり着いてしまったのです」
「とにかく、ここにいつまでいても、しかたないべ。ここは、安全な場所だから、とにかく、外に出るだよ、大丈夫だから」
「僕たちは、そのために、皆さんに話しをしに来たのです」
「なんちうか、国際救助隊サン*-バードだな」
「ああ・・うむ・・しかし、姫さまは」
「無事です。無事に、別の方法で脱出されていますから、そこは安心してください」
「本当か、本当に、姫様はご無事なのか、ご無事なのか、ドナーどの」
最初のコメントを投稿しよう!