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ぐじゅぐじゅ・・
このような緊急事態に動転した老人だ。あまりのストレスに、涙腺が切れてしまったのだ。鼻水も垂れ流し。それでも狂ってしまったわけではない。
「ご無事です、落ち着いてください。さあ、みなさん、とにかく、外へ。このあと、みなさんを、お休みできる場所にお連れしますから、さ、市枝も、みなさんを外に、誘導してください」ドナーは言った。
市枝も、この老人ほどパニックになっているわけではないが、何が起こったか判らなくなっているのは間違いない。その意味ではこのアークについて少しは知っているドナーのほうが、リーダー格に ならざるをえなかったのだ。
がちゃ
外に緑の大地が広がっているのを見ても、今しがたまで夜の大西洋の洋上を飛んでいたはずの彼らは、自分の勝手な判断で外に出る気にはならなかったのは無理ない話だ。
レム侍従長の命令でスチュワーデスが扉を開けるまで、誰も外には出ていなかった。
DC-8は、着陸ギアを出さない胴体着陸の状態で、大地の上にあった。階段がなくても、大人なら、なんとか無事に下りることが出来た。
外から見ると、きれいな機体に、いつの間にか、無数の蔦が絡まっていた。もう、何年も昔にここに不時着した機体だとしか、考えようがない。もっとも、こうなると、ドナーでも狐につままれたような気分だった。そのときだった
「おお」
先に下りて、機体の周囲にたむろしていた乗員が、どよめいた。
ぱきき・・
森の中から、それが現れたからだ。
銀色のよろい姿の巨人。
「******」彼は、人間の言葉では発音できない声を発した。
「ここは、アンドロメダではありません。隣の銀河の中にある、地球という惑星です、勇者ベガ」テレパシーとともに、ドナーはその巨人に声をかける。半ば半信半疑だが、この際、下手な説明は却って誤解の元だと、ドナーには、わかっていた。
「*****」
「ようこそ、地球に。ここには幻魔はいません、どうかくつろいでください。そして、先ほどは、ありがとうございます。危ないところを助けていただいて。僕は、地球人、アメリカ人のジョージ・ドナーといいます」
「じょーじ・どなー」
「ええ」
「べが、だ」
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