もふもふのレイチェル

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 ドナーは、まさにそのままの人生を送ってきたのだった。長じて、上手に耳をふさぐエチケットも持つようになったが、幼いときに身についた対人恐怖は、どうにもならなかった。極端にあからさまに人を避けることはないのだが、気がつけば、人だかりを敬遠し、逃げ出したくなる。その意味では、大都会などその心の越えの喧騒を想像しただけで仕事ででもなければ、逃げ出したくなるドナーであったのだ。  今も、まさに自ら名乗り出たレイチェルを前にして、立ち往生になってしまった、ドナーなのである。だが、では現れた彼女の前から逐電しようというわけでもない。当然ながら、ドナーの能力が、まさに彼女がラチルの”本体”だったことを示しているからだった。  今、かつての”この”幻魔世界は、ドナーたち”太陽の戦士”たちの基地に変わっていた。  かつての幻魔世界の支配者であったマ王の精神構造を、ドナーたちのテレパシーで書き換えを行ったからだ。  この幻魔世界は、間違いなく、この宇宙の異次元空間に無数に存在するであろう、幻魔一族がその超能力で構築した幻魔世界のひとつである。異次元空間に浮かぶ”泡”というか、”船”のようなものなのであった。  ”太陽の戦士”と呼ばれる超能力者であるドナーは、仲間となったいずれも超常能力者のムー王女ソル、同じくムーの人狼ナル、古代ギリシャ人少女クロノス、アトランティス神殿衛兵ダツラ、そして同じ時代のNY出身のソニー・リンクスとともに、このマ王の支配する幻魔世界を攻略するためにやってきたのだ。そして、七転八倒の艱難辛苦の末に、この世界の支配者マ王を”転向”させるのに成功したのである。  当初は、マ王を打倒、つまり暗殺することで、目的を達成しようと漠然と考えていたのだが・・その後の行動の結果、作戦が変わった。幻魔の基本は死霊、悪霊だということ。今風の言い方をすれば、超強力な邪悪な残留思念。それは、音溝が壊れたレコード盤のようなものであり、ただの情報に過ぎない。その邪悪さを転換してもし、それを清浄、正善なるものに”書き換え”ができればいいのではないか。それは、逆に彼らの超強力なエネルギーに真正面からぶつかるよりは、成功の可能性があるように思われたのだ。そして、ドナーたちの”浄化”作戦が決行されたのである。そして、それが成功した。
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