もふもふのレイチェル

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 討伐隊の旅の途中で、ドナーたちはウサギ人間のラチルと出会い、些細なかかわりを持ったために、彼女は非業の最期を遂げてしまったのである。そのために、ドナーは怒り狂い、一時期正気を失うほどだった。それは彼を新たな幻魔とするためのマ王の策略だったのだが、ドナーはまともにその罠に引っかかってしまったのだった。もっとも、その罠のおかげで、ドナーの隠された能力が開花したのだが。  ほかの討伐隊の連中は、それをして”怪我の功名”と喜んでいるようだが、ドナー一人はそんな風に喜ぶ気にはまったく成れなかったのである。あのかわいいラチルを犠牲にして開花した能力など、考えただけでもうんざりするわけで。それを喜ぶ”太陽の戦士”なんて、どれほどのものかと思ってしまう。  いかに厳しい幻魔との戦いだからといって、喜ぶような不人情な”戦士の気風”など、ドナーには微塵もなかったのである。  そんな中で、ドナーは、”自分がラチルである”と名乗るその少女と、ついにであったのだった。  それ自体は、ありえないことではなかった。  このラチルの場合以外にも、何人もが、この幻魔世界で獣人、神話人種として生きてきたという能力者が存在するからだ。彼らは、”幻魔さたん”によって世界中から集められた能力者、教団幹部たちだった。マ王は、彼らの能力も使って、この幻魔世界を強大なものに見せかけていたのだった。その大きさは、今でも十分巨大だが、それでも、巨大な船のイメージに近いのに、ドナーたちが探検した全盛期には、中堅国家ほどの広さがあったのだ。 「・・・もしかして、君もまた、幻魔さたんの教団の一員なの」 「・・・ええ」レイチェルは、小さく、恐縮してうなづいた。  まあ、ラチルのときから、彼女が超能力者であることはわかっていた。しかし、その基調は、とても幻魔やそれに類する邪悪な波動を感じさせるものではなかった。あえていえば、凡庸な少女のそれに近く、この幻魔世界にあってはそれで十分に貴重なことだった。  しかし、その奇跡だったからこそ、ドナーは彼女をそばに置き、そして愛したのだった。
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