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「ああ、そうだったべな。あんたは、あんたの世界ではまだ、誰もベガにはあっていないんだったね」
「よくわからんが、彼は、そのどこかの地球の”太陽の戦士”ってことなのかな」
「まあ、そんなところだべ。でも、こうして次元回廊の中にいれば、いずれ、ドナーも勇者ベガに会うことになるべ。今は、自閉の罠から抜け出して、地球の”太陽の戦士”のためにがんばってくれてるんだから」
「ラチル、君は、ベガを知っているんだね」
「ええ、あたしも、ただ、話を知っているだけだけど・・」
先ほどから無意識にドナーは彼女をラチルと呼んでいるが、あえて彼女はそれを拒否したり訂正したりしようとしない、それが、彼へのマナーだと理解しているのだろう。外見は、ぱっとしないが、賢明な女の子であることは間違いない。
「それも、幻魔さたんの教団の」
「うそを言っても仕方がない。そうだべ。あたしも、父さんの縁で、さたんの教団に入って、いろいろ教えられたんだ」
「そうなんだ。君も、幻魔の手先になるために、ラチル?」
「そうだべ、ドナー」
「そんな、何が悲しくて、その若さで。いや、お父さんの縁でって・・お父さんが教団の関係者だったのかい」
「ええ、あたしのお父さん、レオナード・タイガー・・ドナーも聞いたことがあるのじゃないかしら、その名前は」
「タイガー・・・って、もしかして、あのクエーサのドク・タイガー?」
「もしかしなくても、そうなんよ」
「あのタイガーに子供がいたなんて・・まさか、隠し子とか?」
「んにゃ、お父さんとお母さんは、もう何年も前に離婚していて」
「君は、その、お母さんと暮らしていた?」
「んだ。そのあと、クエーサーでのし上がったお父さんが、お母さんを探して・・呼び寄せられて。で、あたしに超能力があることがわかったら、教団の本部の修行所で生活するようになったの」
「ああ、それは、黒野さんから聞いたことがある」
「クロノス?」
「違うよ。まあ、ラチルは知らないだろうけど、クエーサの幹部で”太陽の戦士”の総元締めの女性なんだ」
「そうなんだ」
「でも、結局、あれ、どうなったんだろう。というか、どうも話を聞いていると、どうも君たち、教団側の人間は、僕よりも間違いなく、何年か未来の時世に属する人間のようだから」
「みたいだね。あのDC-8で遭難した人たちは、その事件の後、半年で戻ってきているのだけどね」
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