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「戻ってきている・・の?」
「ええ・・あたしは、話を聞いただけだから、詳しいことはわからないのだけど、それまでどこで何をしていたか、誰も記憶がないままだったはず」
「それ、僕も?」
「さあ、知らない。ただ、みんな、バラバラで、どこかの街角に、なんていうか、町の中をフラフラ歩いているのをみつかるとか、そんな感じだったと思う。みんな、記憶をなくしてたンだってね」
「うむ・・このアークの秘密を守るために、みんな記憶をなくしたことにしようという話にはなっているけど、実際、どこまでがお芝居で、どこからが本当なのやら・・」
「あたしには、わからないわ。DC-8遭難事件の後、”さたん”様・・バージョンアップして、魔天使”るしふぇる”様と名乗るようになっていたけど・・力で四次元世界にも”住処”ができたからと・・”力ある下僕”は、この”住処”に移るようになったンよ。もっとも、その”住処"は、今のように広くは無くて、そうそう、DC-8を中心にした泡の中のような感じだったンよ」
「DC-8・・」ドナーは、改めて言った。
「もともとは、”住処"は、そうなんよ。今も、探せば、どこかに埋まっているかも」
「わ・・・お、この世界に、あれ、僕の乗っていたあれがこのアークのどこかにあるんだ」
なんか、それはドナーにとって盲点だった。いまさら、あの老朽ジェット機になんの未練があるか。”太陽の戦士”の亜空間にいた連中でもDC-8の話をすることは絶えてなかった。自分がどういう経緯であの亜空間にとらわれることになったか、忘れたわけではないが、あの老朽ジェットの行く先など、とんと考えたことも無かった。漠然と、どこかに落ちてしまったのだろうと、何の根拠も無く思い込んでいたのだ。
「うむ・・」
「探してみるべか」レイチェルは、探るように下からドナーを見上げるようにして聞いた。
「ああ、そうだね」ドナーの返事はそうだった。”そんな面倒なことはしないよ”と答えることも出来たはずだが。主に、”何もすることがないから”というのが大きい理由であるにしても、だ。
「じゃあ、いくべか」
「今から?」
「善は急げ、だべ」
「善はって、何か、いいことでもあるってのかい」
「それは行ってみてのお楽しみだべ、ドナー」
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