見知らぬ相棒

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 その子の存在に気が付いたのはごく最近のことで、いつもお母さんと一緒にこの時間に電車に同じ駅から乗るのだが、まさに通勤のピークの時間帯で、いつもギュウギュウ詰めの車内で押し潰されそうになっていた。  可愛そうだな…、そんなふうにいつも思っていたけど、この混雑じゃそれも仕方ないことだと、心の中では思っていた。その子はいつもお母さんに抱っこされて電車に乗っていて、お母さんの首にしがみつきながらじっとしているけど、その目からは今にも涙がこぼれ落ちそうなときもあったが、そんな時お母さんは「もうすぐ着くからね、頑張ろうね」と、笑顔でその子に話しかけていた。  きっと何か事情があって、電車に乗らないと通えないような遠い保育園に通っているんだろうなと思いながらも、そんな親子の姿は、私が今まで生きてきた中で、想像もしたことのない光景だった。  今でも微かな記憶に残っているのは、田舎育ちの私の子供の頃はお母さんの自転車の後ろに乗って保育園まで送ってもらったものだった。  雨の日だって雨ガッパを着せてもらい歩いて行ったけど、それでも保育園は家のすぐに近くにあるという思いだった。  小学校も、中学校も歩いて通っていたし、高校生になって初めて通学にバスに乗ったぐらいだった。二人いる私の子供も女房が同じように自転車に乗せてよく送り迎えをしていた。     
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