見知らぬ相棒

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 それなら私もその親子の近くに立つことが出来ないか考へ、混雑の中電車に乗る時どうにかその親子の前に立てるように動いてみたが、やってみると意外と簡単だった。多少他の人に、「なんだこいつ…」みたいな顔はされるけど、そんなことは気にしないでいた。 その親子の前、言ってみれば私のベストポジションをキープすれば後はそんなに難しいことはない。電車の扉が閉まったら片腕をドアにあてて踏ん張るだけだ。 電車が揺れるたびに後ろから物凄い圧力が掛かってくるけど、どうにかその圧力を体で抑えてお母さんが押されないように頑張るだけだ。  それからというもの、毎日そのベストポジションに立つことが私の日課になっていた。揺れる電車の中で少しでもその親子が押されないように頑張っていた。 ハッキリ言って、自己満足の世界ではあったけど。  そんなことを始めて数日がたったある日、いつものように私はベストポジションに立ち踏ん張っていた。ところがいつもより後ろから掛かる圧力が軽いような気がしていた。 周りを見てもいつもより車内が空いている分けではないし、最初は気のせいかとも思ったけど、やはり明らかにいつもより体に感じる圧力が弱い。何気なく頭の上を見てみると、そこには手すりを力強く握りしめた腕があった。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加