見知らぬ相棒

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そう、その人は私の後ろに立ち、私に負担が掛からないようにしていてくれていたのだ。混雑のため振り向くことができないので、顔を見ることができなかったが、わずかに自分の肩越しに見えたのは、茶色く染まった髪の毛だけだった。 その日、私が今まであじわったことの無いような穏やかな気持ちで一日過ごせたのは、言うまでもないだろう。   私がその人の存在をハッキリと確認できたのは次の日だった。 いつものように駅のホームに着くと、私がいつも電車に乗る場所の手前にある売店の横に、茶髪の大学生位の子が立っていた。私はその子が昨日の人だとすぐに確信することができた。 思った通り私がその子の横を通り過ぎると、その子は私の後に着いて来た。 電車が到着し、私がベストポジションを確保しようと動いている後ろで、彼なりのベストポジションを確保しようとしているのが手に取るように分かった。  人は見かけによらない、と言っては失礼かもしれないが、“今の世の中不満だらけだ”、と言わんばかりのふて腐れた顔をして、そんなうっとうしい世の中の雑音をシャットアウトしたいがために両耳はイヤホーンでふさがれていた。 でも、電車が揺れるたび、必死に私の負担を軽くしてくれているのはハッキリと分かった。 何かあると〝ゆとり世代〟と言われてしまう世代。学力低下なんて言われるけど、そんなに気にすることはないのではないだろうか。     
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