カラフルカメレオン

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観戦席に戻ると、そろそろゆりの出場する競技が始まろうと言うところだった。 「遅かったね、見つかったの?」 待っていたりつこの元に2人は戻り、事の顛末をすずねが詳細に話した。 話し終えたところで、すずねの頭にりつこが軽いチョップをいれた。 「あだっ!何するのー」 「何するのじゃないでしょ、あんたもあずきがいいって言ったんだから程よいとこでやめなよ」 「でもさー、りつこだって気になるって言ってたじゃん」 「私は気にならないと言えば嘘になるとだけしか言ってません。 あずきも、すずねはもっと強く言わないと止まらないこと知ってるくせに言わないんだから」 りつこにそう言われ、あずきは曖昧に笑って見せる。 「でも、向こうだってお礼を言いたいって言ってたし」 そう言うと、りつこは全く、と言わんばかりにため息をつく。 その後すぐ、ゆりの出場競技である女子100m走が始まる。 パッと選手の顔が映し出された電光掲示板を3人は見る。 「あ、ゆりだ!ゆりー!」 すずねがいち早くゆりを見つける。 緊迫した表情の選手が多い中、ゆりは楽しそうな表情で屈伸運動をしている。 「なんかゆり、楽しそうじゃん」 「ゆりって走るの好きだもんね」 「高校陸上の中でもずば抜けてるから、皆警戒するらしいよ」 ゆりは去年のインターハイで、周りはほとんど3年生であるなか、全体の2位という1年生にして好成績を上げていた。 その時1位だったのが他校の3年生だったため、今現時点で予想トップなのはゆりだった。 「周りの別の高校の人たち、めちゃくちゃゆりを意識してるね」 りつこが言う。 確かに、ゆりの周りの選手たちは、ピリピリとした雰囲気でゆりのことをちらちらと見ていることが、スポーツの事はよく分からないあずきにも見て取れた。 「ゆりってすごいなぁ…」 あずきがそう呟くと、選手がスタート位置につき始めた。 「始まるよ!」 すずねが興奮した様子で言った。 声援が一層大きくなる中、パンッと言う乾いた電子音が会場に響き、選手が一気に走り出した。 一番外側のゆりが、それと同時にものすごい勢いで走る。 どんどん他のレーンを走る選手を抜き去り、最後は他をも寄せ付けない速さでゴールした。 その記録は12秒9、という男子にも引けを取らない速さで、あずきたちを含め、あずきたちの高校の生徒は大歓声を上げた。
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