第1話「めざめよ赤き戦士」

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 脳みそが完全にギャンブルに毒されていて、もはやまともに働くことなどできない有様なのだ。  いや、働くどころの話ではない。 ここ最近は、風呂にすらまともに入ることもなくなった。まさに生ける屍、ゴミのような男である。  時刻はまだ6時を回ったばかり。彼がこんなにも早く家を出るのも、家族に会わせる顔がないからだ。卑屈になって毎朝パチンコ屋を目指し、開店の時間までただただ店の前で爪でも?みながらつっ立っている日々を、もう何年も続けている。 「今日は何を打とうかな。『フロッグパルサー』が前日合算良かったから、最初は据え置き狙いしてみようか。あ、でも待てよ……たしか昨日の閉店間際に、ジジイが『三田V』のリーチ目出したまま気付かず帰っていたな。よし、今日はまずそっちから攻めるか」  小声で、すれ違う人々に聞こえないようにしつつも、ぼそぼそと今日の予定をわざわざ言葉に出して確認するゴウスケ。世間さまとの関わりが途絶すると、得てして人は、こういう気持ちの悪い習性を無意識に見せるようになるものだ。  それでもゴウスケは、まだある程度社会性を有しているというか、自分の立場はわきまえている。通勤・通学路は避けて、裏道ばかりを通って毎朝パチンコ屋に向かっていたのだ。     
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