*上弦の月*

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車のフロントガラスにひらり、と一枚の桜の花びらが付いた。 続けて2枚、3枚と落ちてはガラスに付く。 …これからが見頃か。 ようやく暖かい春らしい日が続いたある日の昼過ぎ。 どうやら事故が前方の先にあったようで、ノロノロ運転が続く。加えての信号待ちだ。 ふと、右のガラス窓を見た。 母親らしき女性がベビーカーを押しながら、気持ちよさように頭上の桜を見上げつつ歩いている。 …昼メシ、どうすっかなぁ…。 会社に戻るには早過ぎるが、この渋滞を考えると、どこかで昼食を取って戻るには遅過ぎる。 小さくため息をついて視線を前に戻すと、信号待ちしてる十字路の左方向から、何やら白いものが勢いよくコチラに向かってくるのが分かった。 何だろうと思って左を向くと同時に、ぶわっと花吹雪が舞った。 そして桜の花が舞う中、全力疾走してくるモノ…イヤ、人にかなり驚いた。 …花ヨメ!?
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