第一章 あの頃

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 アパートは西荻の北口から、歩いて10分ほどの所にあった。狭い路地を貸本屋、レストラン、居酒屋、そして神田川と真っ直ぐに歩いていく。木造アパートの一階、六畳一間小さな部屋、キッチンとトイレが付いている。風呂は無く、青梅街道を渡った所にある古い銭湯。それでも二人には十分な環境だった。あの頃24時間営業のコンビニが出来始めていた。アパートの近くにもそんなコンビニがあった。僕らは深夜によく買い物に行った。アイスクリームやポテトチップスを買った。そう、まるで「神田川」や「同棲時代」のような生活だった。  あの頃・・・僕には三つ年下の妹と多摩にアパートを借りていた。妹の大学は相模原、僕の大学は池袋。その中間?小田急線沿線の駅にアパートを借りていた。。彼女のアパートの方が、大学に近い。そんなに真面目に大学に通った訳ではないが、とにかく、彼女と一緒にいたい。大学もそんなに通わなかった。アルバイトが楽しい。そのお金で彼女とチョット贅沢な食事。しかし、何かが崩れてきた。そう、今だから分かるが僕は心を病んでいった。当時はただの怠け者だと思った。原因は分からない。大学が楽しくない。友人にも会いたくない。僕は今で言う「ひきこもり」になっていた。そして彼女のアパートから出ることは殆ど無くなった。     
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