腕枕

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売店で入院案内に書いてある物を揃える。歯ブラシ、歯磨き粉、プラスチック製のコップ、タオル、必要な物は案外少ない。 エレベーターで上り2階に着くと、 入口と思われる場所に『御用の方はインターフォンでお話下さい』と張り紙がしてある。加奈子はボタンを押した。 「はい。何の御用でしょう?」 「今日入院する事になりました、斎藤です」 「斎藤さん、ああ。話は聞いています。今鍵を開けますね」 少しして、ガチャガチャと音がすると、重そうな扉が開いた。 「どうぞ、中へ、斎藤加奈子さんですね。こちらはご主人様ですか?」 「そうです。宜しくお願いします」 「二人共ボディーチェックをさせて下さい」 看護師さんが夫の身体を触る。 「入っても良いでしょう。ご主人様のバックはそこのロッカーの中へ入れて下さい。持ち込み禁止です」 付き添いの夫の荷物まで? 加奈子は驚いた。 それから、加奈子もボディチェックだ。ポケットの中身まで丹念に調べられた。 「入院に必要な荷物は中で全部検査します。中へ入って下さい」 もう一つドア、そして鍵が掛かっている。二重の扉で閉まっているようだ。廊下を歩いてナースステーションらしき場所に入る。そこもまた鍵、幾つ鍵が掛かっているのだろう。 「こんにちは、斎藤さん、今日から入院ですね」 体格の良い、男性の看護師さんがお辞儀をする。ナースステーションの中には何故か男性の看護師さんが多かった。 「はい。宜しくお願いします」 「今から、荷物を検査しますね」 売店で買ってきた荷物が開けられる。 「1階の売店で買ってきたのですか?」 「そうです。急に入院って決まったので」 「売店に売っていた物だったら大丈夫でしょう。皆さん、化粧水とかエタノール入りの物を持ってくるから。そういう物は持ち込み禁止です。それからストッキングを脱いで下さい。預かっておきます」 (ストッキングが?何故?) そういえば靴紐やベルト等は持ち込み禁止と入院案内に書いてあった。ストッキングもか。自殺防止かな。
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