腕枕

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加奈子はどう切り出したらよいか悩む。少し酔いが回って来た頃、ポツリポツリと話を始めた。 「今度私、メンタルクリニックに行くでしょ。その時は和也さん、土曜日出勤になるかな?」 和也さんと言うのは夫の名前だ。 「今度病院に行くのは何時だっけ?」 「一週間後よ」 「来週は大丈夫だと思うよ」 「じゃあ。一緒に行ってくれないかな?」 「どうした?何かあったのか?何時もは一人で行くのに」 「不眠だけじゃなくて、まだ悩みがあるの」 「どうした?」 ダメだ。言えない。言ったら、夫は驚くであろうし、もしかしたら怒るかもしれない。今飲んでいる焼酎のサワーも取り上げられてしまうだろう。後一週間、最後に鱈腹飲ませてほしい。 「病院で話すから、心配しないで。大した事ではないの」 加奈子は話を誤魔化し、もう一缶、お酒を開けた。吐き気は完全に消えたようであった。
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