孤独

「ふふっ」
　彼女は電源ボタンを押すことをようやく諦めると小さく笑った。彼女の控えめな笑い方は僕にたんぽぽの花を連想させた。すると、彼女は机に頬をつき、外を見始めた。終わりゆく世界を見る彼女の表情からは何も読み取れなかった。不意に、彼女がこちらを向いた。ほんの一瞬、視線が交差する。彼女の茶色い大きな瞳には何の色も見えなかった。しかし、僕はその永遠のような一瞬にこれまでの人生が救われた気がした。
　再び彼女は外を向く。僕も外に目をやった。先程より着実に大きくなった隕石は今度は僕に不思議な安堵感を与えた。もう、世界が終わる。