春嵐の誉れ

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 嫌な風──?  いやいや。 「そんなこともないですよぉ。尊い犠牲です」 「え?」 「何でもないです!」  思わずにひっと笑ってしまう。手の中のミルクティーも嬉しそうだ。 「───……」  先生は、少々面食らったようにあたしを見た後──。 「……お……落ち込んでないなら、何よりです……」  若干赤らめた顔を隠すようにして、眼鏡を上げた。  今は、先生のとなりで雨宿り。  くすぐったい風のお手柄に、心の中で「ありがとう」と呟いた──  傘の藍より遥かに青い、(しゅん)(らん)の誉れ。 【end】
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