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ボート乗り場を抜けた時、バッグの中の電話が鳴った。開いて相手を確認したわたしの心が、フワッと何かに包まれた気がした。
通話ボタンを押して携帯を耳に当て、そっとその名前を呼んだ。
「あおくん……」
「なんだ、まだ立ち直ってねーみたいだな」
「え?」
想定していなかった内容の、アオ君の第一声にわたしは思わず聞き返してしまった。
「立ち直って、ない?」
「俺、この間は何があったのか敢えて聞かなかったけどさ」
思わず、ああ、と吐息混じりの声を漏らしてしまった。その瞬間、今まで身体の芯の部分を辛うじて支えていた力が抜けてしまった気がした。
ぽろぽろと涙が零れてきてしまった。
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