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「咲希」
全身にアオ君の肌を感じながら目を閉じていたわたしの耳に、低くて柔らかな声が滑り込む。わたしは顔を上げてアオ君を見た。
アオ君の大きな手がわたしの頬を包むように挟んだ。
「咲希、さっき俺が話したこと、覚えておいて欲しい」
さっき話したこと。わたしは少し前の記憶を辿る。
「あの、〝許す〟という話?」
「そう」
わたしは首を傾げる。
「どうして?」
「いや、いずれこの言葉が咲希の中で大きな意味を持つようになると思うから。」
ますます分からなくて困惑しきりのわたしを、アオ君はもう一度優しく抱きしめた。
「ごめん、今はこれしか言えない。いずれ、な」
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