必要なスキルとは

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 婚約破棄をされ、その元婚約者は後輩に取られていた。その現場を、金曜日に見てしまった。  金曜日に、アオ君が見つけた〝荒れたわたし〟に繋がる一連の出来事はこれで終結する。ここまではスラスラと話せた。  でも、アオ君から電話を貰った時に零れた涙はまた別のところに起因している。それが上手く話せなかった。複雑に絡み合った事情は、どこをどうかいつまんでも自分に都合のよい内容にしかならない。  人は、失いたくないものが出来ると全てを話せなくなる。守りに入ってしまう。わたしはまた、同じ事を繰り返しているのかもしれない。  核心を話さなければこの話しは帰結しないのに、話せない。聞いてくれたのに、ごめんなさい、アオ君――。 「たくさんの人を踏み台にして、今の〝わたし〟があるの……」  結びは、独り言のようになってしまった。
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