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高校生だったアオ君に、どんな事情があったのだろう。そう言えばアオ君は何の仕事をしているのかも聞いていない。店長サンも詳しくは話してくれなかったし。
「咲希、手が止まってるぞ」
「あ、ごめん」
顔を上げると優しい瞳があった。自然と互いに顔を近づけて、キスをした。
痺れるような幸福感は、愛しい人が傍にいる、という実感だろうか。
フレンチキスは、柔らかにそっと。アオ君は唇の後、額にキスをした。
「いずれ、全て話すから。ちゃんと」
わたしの心にあった疑問に対する答えのようだった。
「アオ君……」
どこまでの、全てだろう。そんな事を考えた時、ふと過ったのは、先に全てを話さなければいけないのはわたしの方だ、という考え。
いつか、互いに全てを穏やかに話せる日が、来ますように。これは、わたしのわがままかもしれない。でも、今はそう願わずにはいられなかった。
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